家のつくりようは夏をもって旨とすべし
これは兼好法師が書いた『徒然草』にある一節で、 「家を作る時は、夏の住みやすさを優先して作るのがよい」という意味です。 冬は厚着をしたり暖める手段もありますが、冷房もない時代、夏の暑さを減らす家づくりを勧めました。 このフレーズは広く受け入れられ、今でも風通しのよい夏向きの家が多く建てられています。 しかし、続いて「天井の高さは冬寒く燈暗し」ともあり、冬のことも気にかけていたようです。
徒然草が書かれた鎌倉時代(約700年前)、夏のリスクは高かったと思われます。 高温多湿の日本では食中毒が日常茶飯事で、実際に1910年頃は夏の死亡率がトップでした。 これが近年では、冷蔵庫の普及などで衛生環境が改善され、1970年には逆に冬の死亡率が高くなっています。 肺炎や心筋梗塞・脳梗塞など、冬を代表する病気の割合が増えたためです。
世界的に見ると、寒冷地の国々では冬の備えがしっかりされており、季節間で死亡率の差はあまりないそうです。 日本で冬の死者数が多いのは、冬の寒さ対策が不足しているのかもしれません。 夏の気温はフィリピンなみ、冬はスウェーデンのレベル。 日本の家づくりでは夏の対策と同時に、冬の対策も不可欠です。
冬は6割の熱が窓から逃げていく
冬の寒い日、せっかく暖房した室内の熱も外へ逃げてしまいますが、その58%もが窓を通してです。 高性能なエアコンをつけても、何も対策しなければ窓からエネルギーが垂れ流しです。 熱の流出を絶ち(断熱)、暖かくて快適な冬を過ごしましょう。
ちなみに、夏に冷房した部屋に外から入ってくる熱は、窓を通してが73%もあります。 窓の断熱性能を上げれば、これも防ぐことができますので、 一年中通して快適で省エネな家になります。
カーテンで冷気をブロック
窓に隙間はないのに、何かスースーすることはありませんが。 室内の空気が窓ガラスに熱を奪われて冷気となり、これが風のように流れてくるためです。 これを防ぐためにカーテンの対策をしましょう。
【断熱カーテン】
まずは、「断熱」や「遮熱」性能を前面に出した断熱カーテンへの取り換え。 基本は厚手のものですが、 糸を高密度に織り込んだもの、裏地をつけた二重のもの、特殊コーティングを施したもの など、様々な製品があります。 デザイン性は一番大切ですが、遮光性や防音性も合わせて選んでみましょう。
【隙間を無くする】
カーテンで断熱する時に大切なのは、冷気が出てくる隙間を無くすることです。 よく、カーテンを床まで届く長さにすることは言われますが、忘れがちなのが左右の隙間。 対策の一つがリターンカーテンです。 両サイドに10㎝ほどの折り返し部があり、窓枠までキレイに覆えます。 簡易的に効果を確認するなら、両端のフックを内側のレールに掛け替えてもOK。 どうしても隙間ができる時は、マジックテープやマグネットなどで窓枠に固定すれば完璧です。
【断熱ボードや断熱シート】
ホームセンターや通販で売られている窓用の断熱グッズも効果的です。 DIYで安価・手軽にできますので、目立たないところやカーテンで隠れるところに試してみては? まずは断熱ボード。 窓の幅に合わせてカットし、ガラス側に立てかけるだけです。 窓の下半分を隙間なく覆うことで、冷気の流れをせき止めてくれます。
そして断熱シート。 荷造りに使われる、いわゆるプチプチ(エアクッション)の構造で、窓ガラスに直接貼りつけます。 プチプチ部分が空気層となって、熱の伝導を防いでくれます。 ただし、ガラスにフィルムを貼ると熱割れを起こしやすいので、説明書をよくお読みくださいね。
二重窓で冷気をシャットアウト
後付内窓
かつて北海道などでは、家を建てる時に窓を二重(または三重)にしていました。 窓と窓の間に空気層ができるので、断熱性能はとても優れています。 これと同じことを実現できるのが「後付内窓」です。
今ある窓はそのまま、後付けで内窓を追加するだけなので、施工時間は1時間ほど。 断熱性以外にも、結露の防止、防音性の高さなど効果は抜群。 また分譲マンションであっても「専有部分」の施工になるで取付可能です。
複層ガラス
最近の一戸建て住宅では「複層ガラス」を標準として取り付けるようになりました。 これは2枚のガラスを少し開けて重ねたもので、 二重窓で空気層を作るのと同じ原理で断熱します。
構造的に厚くなる(12mm~)ので、専用サッシが用意されていますが、 中には薄いタイプ(7mm以下)もあり、今のサッシのままガラス交換だけで済みます。 (内窓にも複層ガラスを使えば効果倍増です)
いかがでしょうか。今回は「窓」に注目して冬の寒さ対策の例を見てきました。 窓の断熱化は夏の暑さ対策にもつながりますので、一年を通して快適で省エネな家が実現します。